小さな会社の財務管理

私は財務の基本である複式簿記を本格的に勉強した事はありません。総て自己流です。しかし、永年貧乏会社を経営して痛切に感じていることは如何に財務が大切であり、税理士の作った決算書や合計残高試算表をきちんと読みこなし、理解できなければ健全な経営は不可能だと考えるようになりました。財務管理の仕方を私流で述べながら私の失敗経験をお話しして皆様のご参考になればと思います。

26才の時にまだ世間のこともろくに知らず無鉄砲に独立開業しました。昭和33年頃のことです。開業資金は当時の金で300万円でした。(その頃の私の収入は月/25,000位)個人創業です。この金は総て従兄弟からの借入金で、しかも後から知ったことですが裏金でした。これが原因で、その後長い間資金繰りに悩まされました。金利はこれも後から気づいたのですがかなりの高利で、月45,000円払って居たのです。年利18%です。元金は返済できる状況ではないので全額完済するまで気の遠くなるような金利総額になります。若気の至りというのか世間知らずというのかよくも潰れずにやってこれたもんだと我ながら感心します。
元金が裏金なので金利も裏金です。将来必ず問題が発生するはずです。世間知らずの私は全く意に介さず、しゃにむに働いて凌ぎました。何年か後に少しずつ元金を返し始めましたがこれも裏資金からで大変です。自分の給料から返すか又は税務署をごまかして捻出するか盗んでくるか。

最初は自分の給料から捻出しました。自分の給料と言っても当時は払うものを払って残ればそこから家計費を家に入れる。残らなければ我慢と言う生活でかみさんは苦労していました。でも、馬鹿らしくなって税務署ごまかし法でやりました。誰でも一番に思いつく売上隠蔽からスタート。当然うまく抜けます。しかし、ご存じの様に忘れた頃調査がやってきます。大体5年ごとにです。そのころは漸く曲がりなりにも利益が出るようになり税務は税理士事務所に依頼しておりましたから調査は税理士立ち会いで数日間行われ何事もなく無事終了かと”ほっと安堵の胸をなぜおろし”とは行きませんでした。最終日、これでお終いと言うわけでお昼のことでもあり食事に誘いました。担当者はたっぷり腹ごしらえをして(今は絶対ないことですが当時は平気で接待を受けていました)帰るときににわか雨が。それで一緒に事務所へ戻り置き傘をどうぞとやったわけです。その時くだんの担当者はもうじきやむからちょっと一服と言って座り込みました。その目の前になんと絶対あってはならない件の納品書の控えが。その納品書は穴凹だらけで(わかりますよね)いまでもそれがデスクの上にあったことが不思議でなりません。
天網恢々といいますか役人さんはそれを手にとって調べ始め数分後には露見しました。勿論無申告加算税、重加算税、徹底調査、お目玉とさんざんでした。

この調査で従兄弟との関係がばれれば後は楽なのですがそうも行きません。秘密は秘守しました。三つ子の魂百までの例え通り、懲りずに又やりました。今度は架空の人件費です。しかし、数年後これも見事に露見しました。こちらの手口は月並みですが相手の暴く手口は見事ですね。当日、いの一番に「給与台帳と出勤簿を見せてくれ」どきん!「えーと○○さんはどなた」今日は欠勤です。「あーそうですか。じゃ○○さんは」出かけています。その日は終わりましたが次の日陥落です。相手は事前調査でテーマを絞り込んできます。給与台帳や出勤簿をよく見ればこれは架空の従業員だと簡単にわかるようです。賞与が出ていない、残業が無い、いつも一定の金額など、すぐピンとくるそうです。
こんなこともありました。車持ち込みで運転手を2名雇っていました。雇車料は別として注油はスタンドからの一括請求を会社が支払って本人から使用分を現金で徴収し裏金を作りました。この手口も実に簡単に見破られました。調査の時「お宅の車は今何台?」はあ4台ですが。「全部ガソリン車ですか」どっきん!いえ2台がガソリンで。「そうでしょう請求書に軽油の品名があってしかも車のナンバーが記入してある」もうお終いです。白状しました。しかし、彼らの勘は凄いですね。その他数件、総てばれました。結論。経理はガラス張りでなければだめだと、漸く高い月謝を払って悟った次第です。

それもこれもあの裏金がなければこうはならなかった。それから少しずつ目覚めて行ったわけです。今まではまさにどんぶり勘定で乱脈経理で。繰り返しますが改めてよくぞ潰れずにきたもんだとあきれるやら変に感心するやらです。当時は当然の事ですが経理ソフトなどありませんし、漸く税理事務所が設備をし始めた程度で一般では総て手書きの伝票が基本です。原始記録を元に各補助元帳に手書きで記入する。ここまでは自分の仕事で伝票を計理士に持ち込んでそこから先の残高試算表そして期末の決算報告書、税務署へ提出する各種の報告書などは総て計理士の仕事です。顧問料として月/60,000円と決算手数料300,000円、税務署立会料1日/40,000円で年間1,000,000円はかかります。今日現在ではかなり値崩れしていますが一体それだけの仕事をしているのか疑問です。まず、税理士はひどい言い方ですが税務署の使い走りのような気がします。税理士さん自体税務署上がりが多いようで親玉の税務署には頭が上がらないようです。一体どっちの味方なんだよとすねたくなるときがあります。
それと、癒着もあるようです。以前例の脱税問題で困り果て、手ずるで別の税理士から税務署の役人を紹介してもらったことがあります。脱税の手口をご指南していただこうという目論見で。さるレストランへ招待しました。いやあよく食べよく飲む健啖家でした。それ以上の発展は無く終わりました。こちらの腹が飲み食いだけで終わらせてと、つまり袖の下は出ないなと踏んだのでしょう。最近はお茶は飲むけどコーヒーなどは断りますね。いくらか綱紀がきつくなったのですかね。

そろそろ本題へと入ります。どんぶり勘定から脱却するため、メインバンクに相談しました。例の銀行備え付けの資金繰り予定表なる用紙をもらい、6カ月分の資金繰り表を作りました。でもあまり役に立ちません。それはそうです。基礎的な勉強ができていない、資料がしっかりしていない、かえって百害あって一利なしです。資金繰り表は醒めた人が冷静に作らないと駄目ですね。入金を高めに、出金を低めに記入する様な案配では大変なことになります。独立したてのころ、従兄弟に紹介してもらった一流銀行に、当座を組み小切手の使い方を覚えました。小切手は別として当時は手形用紙は文房具やに置いてあり自由に手形を切ることができたのです。ある日、決済資金が不足して困っていたとき、」先輩の友人が手形を切ればとアドバイスしてくれて、へーそんな手もあるんだと早速切りました。期日がきました。でも、相変わらずのどんぶり勘定ですから期日の決済が危なくなりました。仕方なく相手先に出向いて訳を話しますと、鷹揚に勘弁してくれ、まるで有るとき払いの感覚で済みました。今考えると夢のようです。
依然資金繰りに困っていたので,銀行に融資の相談を持ち込みました。三菱のマークのある銀行でした。担保を要求され、住んでいる家を父から私名義に換え急場を凌ぎました。すると翌年、借りた分と同じくらいの贈与税がかかってきました。泣きっ面に蜂です。無知とは怖いものです。
税理士との付き合いで感じていることは、顧問料を取っておきながら相談事はあまり受けたくないようです。親身な税理士も居るのでしょうが、私の税理士は普段は多弁ですが相談事になると無口になります。普通でも試算表が出てくるのは一月以上、個人の申告時には2〜3カ月は出てきませんのであまり役に立たないのです。このことは重要です。段々税理士不信の心境になってきました。同時に対策を考えました。リアルな財務状況を見たい。それにはどうすれば。どんぶり勘定から脱出したい。それにはどうすれば。
そこで始めたことは入出金をきちん行うことでまず、入金は一円といえども当座に入金する。どうしても現金で支出の必要が有れば小口現金を使う。これを実行しました。毎日或る程度の日銭が入りますのでつい、入金せずにそのまま使ってしまいます。これが資金繰りをルーズにする原因の一つだと思ったからです。レジの出力表(レシート)をスクラップブックにきちんと貼り、入金伝票も入念に記入しました。
それから、小口現金は100,000円方式でスタートしました。初回、100.000円を銀行からおろすと袋にいれ、保管します。そこから必要な現金を出して使います。領収書は必ず出ます。それを別の袋に入れて保管します。二つの袋の合計額は常に100,000円です。そして残り少なくなったら小口現金の残金を引いた金額を当座からおろして領収書は一枚一枚A4の用紙に貼り付け日付を記入して保管します。この方法を実施してからは税務調査では、非常に好印象を与えたのか一日か二日で終了し、いつも是認通知がきます。是認通知は勲章だよと税理士が言っていました。その後資金繰りが何故か良くなってきました。勿論当社の財務には裏が有りません。総てガラス張りです。
がしかし、時々腹が立つことが有ります。例えば労働保険の申告です。べらぼうに高い保険料を払わされます。あの組織は(○○労働局)本省直属の組織ですが、その所長クラスはご多分に洩れず天下りのはずです。いわゆる特殊法人の専務理事に収まります。わたしは過去にその特殊法人へ出入りしており、つぶさに見ております。彼らのやり口はひどい物です。怒り心頭です。なぜ国民は寛容なのだろう、お人好しなのだろうと思います。そんな組織の天下り役人の退職金の一助になる金をまともに払えるかいと言うのが心境ですがなんともなりませんね。類似する官庁や特殊法人は枚挙に暇がありません。でも仕方なしにきちんと払っております。余談でした。
税理士が当てにならないので少しずつ対策を立てました。
年間100万円の経費を浮かすこと。が第一の目標。

完璧な資金繰り表を作ること。この目標を完成させるため、次のことを実行しました。
財務管理ソフトの購入。何種類かを選定してお試しソフトで使い勝手を確かめ、財務革命と言うソフトを購入しました。45,000円ほどでした。この手のソフトはWindowsが主流です。わたしはWindowsが苦手なのでMac対応の物を選んだのです。使い勝手は非常に良いのですが残念ながら、この会社は潰れてしまいました。もし、ソフトを選ぶなら、しっかりした会社の物をお勧めします。どのソフトも前準備に結構慎重さと根気が必要です。簡単ソフトとか誰にもできるとかのキャッチフレーズは信用しないほうが良いです。一年間みっちり入力作業をして税理士から送られてくる試算表と照合して、不明な点は税理士にしつっこく質問し、自家薬籠としました。たっぷり一年はかかりましたね。準備完了と同時に税理士と縁を切りました。彼は半額でもいいからと言ってきましたが断りました。まあ、この様にきっぱり断るのには理由が有るのです。

前にもお話ししましたが、私の会社は日銭が或る程度入ります。経理が忙しいとそれを金庫に保管して、適当な時に銀行へ持参します。時には数十万円にもなります。そして経理担当者は着服したのです。数年に及ぶ期間でしたから千三百万円にもなりました。手口は、こつこつ、時には二万、多いときには十数万。最初はちょい借りの積もりで時には返金もしたようです。しかし、大抵そうですが、深みにはまります。金額が大きくなると月末に資金ショートをおこしてばれないのかとお思いでしょうが、当時バブルの絶頂期で、会社も或る程度景気が良く、資金は潤沢でした。では、税理士のチェックで露見しなかったのか。その前に、私は大きなミスを犯していました。営業に、工場にと、席の温まる暇がなかったので実印を彼女に預けたまま経理を任せていました。銀行操作、入出金日のずらし、など有りとあらゆるテクニックを使って長い間露見しませんでした。でも、結局税理士が、おかしいと気づきました。税理士は私に報告する前に経理担当者に詰問したそうで、彼女はあっさり白状しました。几帳面な彼女は克明に金額を記録しており税理士のあぶり出した金額とほぼ一致しました。私は税理士の私どもを担当する女性に聞きました。「毎月末必ず届いているはずの銀行照合表を照合していれば早い内に気づくはずなのに何故?」その女性は「だって、照合表をくれないんですもの」「何故照合表が届かないよと私に報告してくれないの」「済みません」「結局、照合表なしでやってたわけ?」これは税理士側にも責任の一端は負ってもらいたい、と言うのが私の気持ちです。

経理は総て預金関係の裏付けが基本だと思います。毎月照合表を元にきちんとチェックする。これがクリア出来れば後に大事が発生することはないと思います。この様な伏線があった次第です。その後、経理担当者は辞めてもらいましたが、思い直して再雇用し、延々と返済させました。元利とも完済です。さて、財務管理の手本となるものは永年の税理士からの、修正済み原始記録(仕訳日記帳)、総勘定元帳、合計残高試算表、決算報告書があります。これだけあれば十分です。元来、数字というものはじーとにらめっこしているとよくわかって来る物です。結果的にその後、決算報告書まで手がけて提出し取り敢えずはクレームは付いておりません。数年後、調査にきたときはわかりませんが。これらに必要な時間はといいますと、私どもの会社の規模では仕訳日記帳が250行から300行。一週間分を数十分で入力は可能です。これの照合には一ヶ月分を延べ2時間位。試算表は10日以内に出ますから全くリアルタイムでとびきり新鮮なデータが得られます。税理士に依頼していたときのことを思えば雲泥の差です。わからないことが有れば、税務署へ行き教えを請います。実に親切に教えてくれます。昔と違いますね。それに、インターネットでも親切な税理事務所があって頭が下がるおもいです。

財務革命というソフトを使って行う日常業務の他、次のような事を行っております。
レジの清算(レジのたね銭は50,000円、その日50,000円以上あれば50,000円を残した金額をレジから取り出して翌朝銀行へ入金、立会は二名、レジから明細を出力してスクラップブックに貼る、仕訳日記帳発行。)
昔の手痛い経験を元に確立しました。前にも述べましたが税務署調査はレジのある事業所はまず、ここから始めるようです。求められるままにスクラップブックと仕訳日記帳を見せますとここは丹念に見ています。で、完璧で有ればそんな事もないでしょうけれど後は割合スムーズに進みます。彼らは別に資料箋なるものを持ってきて照合します。後ろ暗いことをしていればこの辺でアウトですね。さて、本題に戻ります。
総務関係
月一度の集計 給与計算=Excel
月一度の集計 売掛金一覧表=Excel
月一度の集計 買掛金一覧表=Excel
その都度   小口現金集計=Excel
賃貸物件推移一覧表=Excel
財務関係
借入金残高一覧表・返済計画表=Excel
損益計算書の予測2年分=Excel
資金繰表2年分=Excel

向こう2年分の資金繰り表及び損益計算書を正確に作成するには過去、3年の経費のデータを月別に分析する必要があります。月によって変動があるからです。これらのデータをつぶさに分析すると思わぬ無駄を発見するという副産物があります。こんな例もありました。当社では機械を結構稼働させておりますが電力も馬鹿になりません。よく調べてみると東電との契約の内、固定費的な支払いが非常に高額でそのわけは動力の契約が過大だったのです。遅蒔きながら減設を申請しますとなんと支払いが約半分になりました。10数年間の無駄な経費を計算するとびっくりするような金額です。
流動資金推移表=Excel
銀行預金と必要経費の出入り一覧=Excel資金繰り表が完璧で有れば不要)
経理処理年間一覧表(毎月の決まった処理と特定月に発生する支払いの一覧)
販売管理
受注伝票発行=File Maker
納品書発行=File Maker
請求書発行=File Maker
決算報告書
税務署指定のフォームはスキャンしてIllustlaterで記入
指定フォーム自由な償却資産合計や給与支払い明細その他などは=Excel
フォームは予め使い勝手良く整備し、常に改造を心がけます。
特に償却資産を算出するのは面倒ですからExcelをふるに使って第1表にリンクさせます。1回作れば後は数字のみ入れると総て自動的に第1表が完成します。
給与計算フォーム
市販のソフトも便利かもしれませんが私はExcelで独自に作りました。
変動的な残業計算も算式を埋め込み、その都度数字を入れればOKです。その月の法定福利費会社負担分などが自動的に算出集計されるよう別なセルを設けてあります。基本フォームは日本法令様式のものを参考に作り工夫を加えれば良いわけです。
売掛金一覧表
前月繰越残高、入金、手数料、当月売上、消費税、売上合計、締め後売上合計、翌月繰越の項目ごとに必要な算式を埋め込み、あとはその都度数字を入力。Seet別に売上部門集計を作ります。
買掛金一覧表
売掛金一覧表のフォームと内容は準じますが、私のはSeet2に各支払先と金額をリンクさせ、振込手数料を差し引いた金額の振込明細表が自動的に作られます。

市販のソフトはそれぞれ独立しており、それらが財務にリンクする訳ではありませんので結構煩雑になります。総ての科目が一つのソフトで済み、合計残高試算表にリンクすれば便利ですね。このようなソフトが出現すれば良いのですが、私は寡聞にして知りません。ご存じの方はお教えください。
財務管理を最小限の時間で処理し、先行きの資金繰りを明確にする事は精神衛生上不可欠な要素だと私は確信しております。

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